エジリン(錐輝石) aegirine NaFeSi2O6 [戻る

単斜晶系 二軸性(−),2Vx=60〜70° α=1.750〜1.776 β=1.780〜1.820 γ=1.800〜1.836 γ-α=0.050〜0.060(屈折率・複屈折ともに輝石類では最も高い)

形態
柱状〜長柱状。不規則他形。

色・多色性/濃緑色〜褐緑色〜黄褐色で非常に強い(X´=濃緑色,Z´=濃黄色)。角閃石類よりも屈折率・干渉色は高いが,派手な多色性や消光角などでそれと紛らわしい。



へき開/2方向(C軸方向)に明瞭。C軸方向からはほぼ90°に交わる格子状に見える。C軸に直角の方向からは1方向しかないように見える。
消光角/C軸に直角の方向から見た,1方向しかないように見えるへき開線に対し,最大5°前後(b軸方向から見た場合。他の輝石類よりもはるかに小さく,多色性も著しく角閃石類と紛らわしい)。
伸長/負(色が濃い上,干渉色も高いので,鋭敏色検板で相加・相減が判定しにくく,非常にわかりにくい)

双晶/(1 0 0)の双晶が存在することがあり,それが2〜数回反復していることもある。ややまれに(0 0 1)の双晶も時に見られる。なお,(1 0 0)の双晶ではへき開線は双晶境界で連続しているが,(0 0 1)の双晶ではへき開線が双晶境界で屈曲する。

累帯構造しばしばNa⇔Ca,Fe⇔Mgなどの置換による累帯構造があり,Ca・Mgの多い部分はやや色が薄く,干渉色も低い傾向がある。特に火山岩(アルカリ火山岩)中のものに累帯構造がよく見られる。



産状

アルミニウム欠乏条件でできる鉱物で,コランダム・Al2SiO5鉱物などとはあまり共生しない。通常の岩石に見られる曹長石(斜長石)+磁鉄鉱(あるいは赤鉄鉱)の組み合わせがアルミニウム欠乏条件になるとエジリンになると解釈され,エジリンに富む閃長岩にはFe-O系鉱物を欠く場合が多い。

・エジリンは火成岩のうちでアルカリ深成岩(ネフェリン閃長石など)によく含まれ,肉眼でも黒〜緑黒色繊維状〜細柱状で目立つ。ほかの輝石類より濃色で,多色性の色がどぎつく,C軸方向に伸長する傾向が強く,長柱状集合体のものも多い。アルカリ火山岩のものはやや透輝石成分に富み(エジリン普通輝石などと呼ばれる),固溶体組成による色の濃淡の累帯構造がしばしば見られ,深成岩中のものほど濃色ではなく,多色性も派手ではない。

・他にはスカルン帯に,高アルミニウム鉱物であるグロッシュラーやゲーレン石が多量に生成することで,そのそばの岩石がアルミニウム欠乏条件となり,そこにリーベック閃石などとともに生成している場合がある。




エジリンを含む閃長岩ペグマタイト

灰白色の長石類やネフェリン・白色微粒集合体のリン灰石・緑黒色針状のエジリン・褐色板柱状のアストロフィライトからなる。エジリンはこのように細長く伸びる傾向がある。


平行ニコル

クロスニコル
アルカリ深成岩(閃長石)中のエジリン
Ae:エジリン,Pl:斜長石,B:バラトバイト
エジリンの端成分に近いもので,非常に濃色で多色性は濃緑色〜褐緑色〜黄褐色で極めて強く,干渉色も高い(消光角は数°程度だが,角閃石よりも屈折率は高く,さらに干渉色も高い)。





アルカリに富む安山岩中の累帯構造がある普通輝石(エジリン普通輝石)

中央の自形の短柱状結晶が普通輝石。結晶中央付近は緑色が濃いエジリン成分に富むエジリン普通輝石で,結晶周辺部はエジリン成分が少ない無色の普通輝石。

平行ニコルでは,結晶中央付近のエジリン普通輝石はX'=濃緑色,Z'=帯緑褐色の強い多色性を示し,結晶周辺部のエジリン成分が少ない普通輝石は無色で多色性はない。アルカリに富む火山岩中の普通輝石は,このようにエジリン普通輝石成分に富む部分とそうでない部分とが累帯構造をなしていることが少なくない。そして,この画像のものは中央のエジリン普通輝石と周辺の無色の普通輝石との境付近がわずかに紫褐色を帯び,その部分はTiの多いチタン普通輝石である。チタン普通輝石もアルカリに富む火成岩に頻繁に見られる。

一方,クロスニコルでは,そのような累帯構造のある普通輝石は,エジリン成分に富む部分は干渉色が高く3次に達し,そうでない部分は2次程度で低い。そして,上のクロスニコルの画像のように結晶中央のエジリン成分に富む部分と結晶周辺部のエジリン成分に乏しい部分では消光角も異なり,結晶全体で波動消光を示す。